宇宙規模ではかなり近い
こんなウキウキするようなニュースが飛び込んできました。
「最も地球に似た惑星」欧州の天文台発見 表面に岩や海
ちょっとだけ引用します。
欧州南天天文台(ESO)は24日、これまでに見つかった太陽系外惑星の中で「最も地球に似た惑星」を見つけた、と発表した。平均温度は0〜40度で、生命の誕生に不可欠な液体の水が存在できる。表面は地球のように岩や海で覆われているとみられるという。
この惑星は、てんびん座の方角の、地球から20.5光年離れた場所にある。直径は地球の1.5倍、重さは5倍ほどで、これまでに見つかった太陽系外惑星で最も小さい。太陽より小さな恒星(赤色矮星(わいせい))を、13日間の周期で回っている。
平均気温が0〜40度で、液体の水が存在できる環境にある惑星が、僅か20.5光年の位置に見つかったらしいです。
この環境であれば、生物がいる可能性がありそうです。
20.5光年と言うことは、光の速さで20.5年ということなので、地球人類も頑張れば数千年くらいでこの星まで辿り着けるかもしれません。
コールドスリープを繰り返すことで数千年におよぶ宇宙での漂流に耐えて、この新しい惑星に辿り着くと、そこには地球人によく似た生物の文明があって、でもなんだか寂れていて、惑星の文明の破棄と脱出が始まっていて、実は彼らは「数千年」の間に開発されたワープ航法によって入植してきた地球人で、地球への帰投が決まっていて、数千年のうちに文明は行き詰まっていて、文明の停滞は未知のものへ挑戦する心を人類から奪っていて、でも数千年前からやってきた青年にはそんな状況は耐えられなくて、一縷の希望を胸に再び宇宙を漂流する旅に出る、人類の「老年期の終わり」。
そんな大好きな話を思い出しました。

もしも向こうの惑星に知的生命体が居るとしたら、向こうも地球を発見しているかもしれません。
「生命の可能性が!」とワクワクウキウキテカテカしているんだったら、なんだかとっても親近感を覚えます。
それにしても、なぜこんなにも「地球外生命」に心惹かれるんでしょうね。
独りぼっちではない、という証明が欲しいだけのような気もします。
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リスクの問題
インフルエンザ薬の一つであるタミフルの10代への投与が原則禁止されたようです。
<タミフル>新たに異常行動2件 厚労省が10代の服用禁止
理由としてはタミフル服用後の異常行動により死亡した例が数例続いてきたからです。

タミフル服用後に異常行動を起こし、死亡した子供の事故は04年以降、計5件発生している。今年2月には愛知県と仙台市で中学生がタミフル服用後に転落死する事故が相次ぎ、同省ではインフルエンザにかかった未成年について、発症後2日間は目を離さないよう保護者に促すよう医療関係機関に注意喚起していた。
記事のよると、一応公式に認められている「タミフル服用後に事故を起こし死亡した例は5件」ということみたいです。

【タミフル】スイス・ロシュ社が製造するインフルエンザ治療薬。同社の推計では、01年の発売以来、世界の服用者の約8割にあたる約2450万人が日本で服用した。
とあります。2005年度のFDAの資料(PDF)によれば、16歳以下の子供への投与は1300万人とのことでした。
このうち死亡例は13例、内訳は1歳以下が1人、1〜5歳が10人、5歳以上が2人(9歳と14歳)となってます。
死亡率としては100万人に1人です。

一方で平成17年度厚生労働科学研究「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」(PDF)では約2800人の小児について、タミフルの服用の有無と異常行動の発生率について調査しています。
一部引用します。

薬剤使用状況と臨床症状との関連性について検討したところ、タミフルと異常行動との関連性はタミフル未使用での発現頻度は10.6%であったのに対し、タミフル使用では11.9%と有意差を認めなかった。なお、同じ期間に異常言動発現とタミフル使用があった場合に、異常言動発現前にタミフルを使用したと仮定した場合のハザード比は1.16でp値0.259で有意差はなく、一方、異常言動発現後にタミフルを使用したと仮定した場合のハザード比は0.463であり、p値0.463でやはり有意差は認められなかった。
一方で肺炎合併については有意差があったようです。

肺炎合併についてみてみると、タミフル未使用の累積発生率は3.1%、タミフル使用では0.7%であり、また肺炎はタミフル使用前に併発したと仮定した場合のハザード比0.24(p値<0.0001)、使用後に併発したと仮定した場合には0.20(p値<0.0001)で、いずれの場合でもタミフルは肺炎を抑制していた。
ただし、この厚生労働省の調査は、2800人中約90%の小児がタミフルを使用していた状況での調査であるため、「タミフル未使用」の子供の数が少ないことは併記しておきます。
また、熊本大学発生医学研究センターの粂先生の調査でも、タミフル服用の有無にかかわらず異常行動が認められています。
http://www.k-net.org/temporary/flu/pub.htm
6ヶ月以内にインフルエンザに罹患した15-18歳の人達は、異常行動を起こすリスクが高いことが1988年段階で報告されてもいます。
Post-influenzal psychiatric disorder in adolescents.

インフルエンザそのものでは、年間に数百〜1000人程度が亡くなっています。
大部分は65歳以上の人のようです。
若年層の死亡率は、調べてみたんですが見つけられませんでした。
また、インフルエンザによる脳症は毎年100〜300人の子供が罹っているみたいです。
その症状の中には幻覚や異常行動も含まれています。
インフルエンザ脳症の簡単な解説

いろいろ調べてみたんですが、やはり私には「タミフルを使用するリスク」は「使用しないリスク」に比べて小さいように感じます。
薬に副作用があるのは当たり前なので、薬を飲んだ場合と飲まなかった場合、どちらがマシなのか、で考えるしかないと思います。
例えば、私がインフルエンザに罹った場合、確実にタミフルを飲みます。
20年後、私に10代の子供がいたとして、そのころにタミフルよりも良い薬がなかった場合、その子供がインフルエンザに罹ったときはタミフルを飲ませると思います。
もちろん、24時間体制で監視しないとマズイでしょうが。

タミフルの服用を断った結果、インフルエンザに罹った人が死亡する、というケースが近い将来必ず起きると思います。
もしかしたらもう起きているかもしれませんけど。
でもタミフル服用によって死亡するリスクも当然あるわけで。
どちらのリスクを取るかは各人の責任だとは思いますが、しっかりと判断できるだけの情報は欲しいと強く思いました。
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睡眠の不思議
睡眠というものは本当に不思議です。
生き物にとって睡眠中は無防備です。
弱肉強食の野生の王国では、睡眠中は命の危険に晒されているわけです。
じゃあ、睡眠を取らない方が進化的に有利だったんじゃないか?
そんな風に思わなくもありません。
身体と脳を休めることのメリットと、休むが故に生じるデメリットとを天秤にかけた場合、メリットの方が大きかったからこそ「睡眠を取る生物」が生き残ってきたんだろうとは思うのですが…。
でも「生き物」というのは「遺伝子」を運ぶ「乗り物」に過ぎないので、睡眠をとらないことで多少寿命が短くなったとしても、昼夜を問わずに活動的になることで充分次世代の「乗り物」へと遺伝子を受け渡すことは可能だとも思ってしまいます。
まあ、大自然が膨大な実験の結果として「睡眠」にはメリットがあるという結論を(現状では)出しているようですので、有り難く睡眠を貪る所存ではあります。

「睡眠」の機構というのは完全に解明されているわけではないようですが、いくつかの興味深い報告はなされています。
例えば、Shakerという電位依存性カリウムチャネルの遺伝子に変異の入ったショウジョウバエでは、普通のショウジョウバエに比べて睡眠時間が約3分の1になります。
寿命も短くなるようです。
また、ドーパミン系やプロスタグランジンD系の睡眠への関与も指摘されています。
ちょっと範囲は広くなりますが、「体内リズム」に関わる遺伝子なら15種類以上が同定されています。
これらの遺伝子が協調して「ねみー」「だりー」という感覚を生み出しているわけです。
とりあえず、今すぐにでも眠りたいくらいに眠いです。

一応参考文献
Nature 434, 1087-1092 (2005)
Nat Genet 37, 187-92 (2005)
Proc Natl Acad Sci USA 103, 17949-54 (2006)
J Neurosci 26, 10577-89 (2006)
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本当にフィクションでした
ちょっと前にあるある大辞典で取り上げられた「納豆」について書きました。
どことなくなんとなく;納豆にネギをいれるのが好き
どことなくなんとなく;納豆について調べてみた
そして最後に冗談でこう書きました。
万が一、私がテレビ局の偉い人になったら、これらの番組の最初にはテロップを流すことを徹底したいです。
「この番組はフィクションです。登場する団体、人物、食品の効果等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。」

この件について、関西テレビ放送からアナウンスがありました。
長いですが、全文を引用します。
1月7日(日)午後9時〜9時54分放送の「発掘!あるある大事典II」第140回「食べてヤセる!!!食材Xの新事実」におきまして、番組内容に事実とは異なる内容が含まれていることが判明いたしましたので、お詫びを申し上げます。視聴者の皆様の信頼を裏切ることとなり誠に申し訳ございませんでした。
事実と異なる内容につきましては以下のとおりでございます。

1. アメリカのダイエット研究の紹介におきまして、56人の男女を集めて、実験をしており、被験者がやせたことを示す3枚の比較写真が使われておりますが、この写真について被験者とは無関係の写真を使用いたしました。

2.テンプル大学アーサー・ショーツ教授の日本語訳コメントで、「日本の方々にとっても身近な食材で、DHEAを増やすことが可能です!」「体内のDHEAを増やす食材がありますよ。イソフラボンを含む食品です。なぜならイソフラボンは、DHEAの原料ですから!」 という発言したことになっておりますが、内容も含めてこのような発言はございませんでした。

3.番組で実験を行った8名の被験者について、放送では「中性脂肪値が高くてお悩みだった2人は、完全な正常値に!」とコメントし数字をスーパーしておりますが、コレステロール値、中性脂肪値、血糖値についての測定は行っておりませんでした。

4.あるあるミニ実験として、納豆を朝2パックまとめて食べた場合と、朝晩1パックずつに分けて食べた場合の比較実験ですが、血中イソフラボンの測定は行っておらず、比較結果は架空のものでした。

5.番組で実験を行った8名の被験者について「体内で作られるDHEAは20代をピークに減少、食べ過ぎや運動不足によってDHEAの量が低下している可能性があるのだとか!20代から50代の男女8人の血中DHEA量を測定。さて結果は?」として22歳OL、25歳会社員、37歳会社員のDHEA量を測定し年齢の基準値と検査結果をテロップ表示で比較をおこなっておりますが血液は採集をしたものの、実際は検査を行っておらず、数字は架空のものでした。また、ここで使用している「DHEA分泌は加齢とともに低下する」ことを示したグラフは許可を得ずに引用いたしました。

また、アメリカのダイエット研究の紹介部分について、あたかもテンプル大学のアーサー・ショーツ教授が行った研究と受け取られる構成になっておりました。この研究はワシントン大学のデニス教授の研究であります。
尚、1月21日(日)放送につきましては休止いたしますのでご了承ください。

以上
つまり、ほとんど創作の作り話でした、と公式に認めたようです。
一研究者である私がこんなことをやったら、研究人生は終わりなんですが、テレビ局はどのような責任をとるのか、今後に注目です。

加えてこれは、納豆が店頭から消えたり、納豆関連会社の株価が上がったりしてますから「風説の流布」の疑いがあるような気がします。
加えて事前に大手の販売店には「納豆の特集をするよ」という情報が流れていたわけですから「インサイダー取引」にも恐らく引っかかります。
放送前に株を買って、昨日売れば良いだけですから簡単です。
ホリエモンとの違いが分かりません。

さて、これでテレビで放送される「健康特集」のような番組が少しでもマシになるといいのですが。
とりあえず、テレビの最後に以下の文言は使ってもらって全然構いませんよ。

「この番組はフィクションです。登場する団体、人物、食品の効果等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。」
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納豆について調べてみた
前回のエントリで、テレビの健康特集を鵜呑みにするのはどうだろう、という趣旨のことを書きました。
その一例として発掘!あるある大事典で取り上げられた「納豆のダイエット効果」のことに触れたのですが、もしこの「納豆の効果」が真実であった場合にちょっとまずいなー、とも思ったので、ちょっと調べてみました。
とは言え私はこの番組を見ていないので、まずはその内容を知らないとなりません。

発掘!あるある大事典の公式サイト
個別記事にリンクを貼れないようなので、トップに貼っておきます。
ここに先日の放送の概要が書いてありました。
ざっくりとまとめると、「デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone ; DHEA)はダイエットに効く」→「イソフラボン(isoflavone)はDHEAを増やす」→「納豆にはイソフラボンが豊富」→「納豆はダイエットに効く」という論理展開のようです。
本来ならこの全てのステップを検証したいのですが、あいにくとそこまでの時間も興味もないので、「イソフラボンはDHEAを増やす」の一点のみについて過去の論文を調べました。
このステップが「納豆」と「ダイエット」をつなぐ要だからです。
正直「食品中の成分の効果」は、あまり得意な分野ではなく、しかも斜め読みなので間違ってたらご指摘下さい。
なお、DHEAはその大部分が「DHEA sulfate」として存在しています。
PubMedで「dehydroepiandrosterone isoflavone」と調べたときに出てきた論文について、目に付くのを読んで見ました。

4つほど論文を見ましたが、共通するのは「大豆由来のイソフラボンを摂取してもDHEAあるいはDHEA sulfateの血中濃度は上昇しない」というものでした。
[1] Goldin BR et al: Hormonal response to diets high in soy or animal protein without and with isoflavones in moderately hypercholesterolemic subjects., Nutr Cancer. 2005;51(1):1-6.
[2] Dillingham BL et al : Soy protein isolates of varying isoflavone content exert minor effects on serum reproductive hormones in healthy young men., J Nutr. 2005 Mar;135(3):584-91.
[3] Persky VW et al : Effect of soy protein on endogenous hormones in postmenopausal women., Am J Clin Nutr. 2002 Jan;75(1):145-53.
[4] Wood CE et al : Adrenocortical effects of oral estrogens and soy isoflavones in female monkeys., J Clin Endocrinol Metab. 2004 May;89(5):2319-25.
一応アブストラクトにリンクしておきました。

残念ながら、私の調べた範囲では「イソフラボンでDHEAが上昇する」という報告は発見できませんでした。
また上記の論文では、女性ホルモンの一種であるestroneは上昇しているものもあったので、イソフラボンあるいは大豆や納豆がが何らかの効果を有することを否定するものではありません。
ただし「イソフラボンによってDHEA濃度が上昇する」と言うことに対しては、「変化無し」という実験結果を出しています。
加えて、上記の論文は「イソフラボン投与時のDHEA」濃度を測定していますが、それが目的ではなく他の目的を検討するための一つのアッセイ系として「イソフラボン投与時のDHEA」を測定しているものなので、あしからず。

「イソフラボンはDHEAを増やす」の一点のみについて、簡単に調査してみましたが裏付けを取ることは出来ませんでした。
興味のある人は他の段階についても調べてみると面白いかもしれません。
でも私はこんなことを調べる余裕があったら、自分の研究についての調査をした方が良かったかなー、とちょっとだけ思いました。
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